どこもかしこもヘンだよ「天地人」

三笠会館の前菜

TBS創立30周年記念ドラマ「関ヶ原 第三夜 男たちの祭り」を観終わった。で、改めて思った。折角の長丁場なのに、人物を描き切れていない大河ドラマ天地人」とは雲泥の差だと…。小西行長に「お主ほど頭が高い人間はおらん。事実上の西軍の大将だが、たかだか19万石だということを忘れるな!」と釘を刺されたのに、戦下手の頭でっかちのくせに、宇喜多秀家島津義弘に対して失礼な待遇や言動をし、みるみる人望や勝機を失って行く石田三成の姿が見事に描き出されている。また、敵方の徳川家康も単なる狸爺ではない。伏見城の戦いで三河武士の鑑と言われた鳥居元忠との別れのシーンなど、胸が熱くなるような佳い脚本だった。もちろん、「天地人」と違って、細川忠興正室ガラシャ夫人の非業の最期に、石田三成ら西軍が関与していたこともちゃんと取り上げている。残念ながら、私の大好きな景勝様はチョイ役だったけどね…。あと、同じくチョイ役ながら私的に注目の美男子・名古屋山三郎(Wikipedia)が取り上げられていたのは嬉しかった。(*^-^*)
先日もちょっと言及したが、「天地人」は、御館の乱で三郎景虎に殉死した遠山康光を関ヶ原以後まで悪の元凶として生かしておいたり、兼続が大阪の陣で真田幸村と諮って千姫を助け出すという大ウソに象徴されるように、史実の空白を想像で埋めるのではなく、史実をすっかり塗り替えてしまうような、歴史ドラマとしては規則違反な脚本が多過ぎたと思う。それでも「新選組!」や「篤姫」のように、結果的にドラマに惹き込まれるほど面白ければ納得もする(おい#)のだが、腹が立つだけでちっとも面白くなかったのが致命的だった。もし、大阪の陣の最中に兼続が幸村と話し合っていたとすれば、幸村から子女を託されたのは伊達家の片倉鬼小十郎重綱ではなく、直江兼続だったハズ(笑) 実際、幸村の「関東軍百万も候へ、漢(おとこ)は一人もなく候!(北川覚書)」という胸のすくような口上を叩きつけられた東軍の中に、上杉軍はいなかった。夏の陣での景勝率いる上杉軍は古田織部の謀反に備え京都に布陣しており、家康の茶臼山本陣にはいなかったのである。景勝や兼続が、「真田日本一の兵、古よりの物語にもこれなし(島津家記)」とか「古今にこれなき大手柄(細川家記)」と讃えられる幸村の大活躍を知るのは、後日の風聞によって知り得たことであり、大阪城落城直後の焼け跡に、兼続がいる可能性はミジンコもないのよ〜###o(>_<)o
加えて、前田慶次郎をはじめとする取り上げなかった魅力的な戦国武将も、原作者や脚本家の勉強不足故に描かれなかった主要登場人物の魅力的なエピソードも、マジで多過ぎる!(特に景勝さま###)。
兼続の千姫救出なんぞを捏造するのならば、家康から「流石は不識庵謙信公の血を引く武将、まこと抜群の働きである」と激賞された、大阪冬の陣・鴫野での景勝をはじめとする杉原常陸介、須田大炊助、安田上総助ら上杉家の活躍に言及すべきである。功を労って「休息して、堀尾山城守と交代せよ」と伝令を走らせた家康に対し、景勝は「弓箭の家に生まれ、先陣を争い、今朝より身を粉にして奪い取った持ち口を上意とはいえ他人に渡せましょうや!(武門の家に生まれて一旦戦場に出たからには、今朝から身を粉にして奪い取った持ち場から、たとえ上からの命令だとしても一歩も退くことは出来ません!)」(きゃぁ♪)と、兵を指揮してますます進み見事に城兵を破った(日本外史)というエピソートもだ。後に家康は、この景勝の言葉を激賞したという。まぁ、三成と同じく頭デッカチ&戦下手の兼続は、ここでは全くパッとせんから仕方ないけど…サ。┐( ̄ヘ ̄)┌ ヘッ!
この冬の陣での働きにより、杉原ら景勝家臣4人に家康から感状が下されたのだが、この杉原さん、手渡した本多佐渡守正信の目前であろうことか家康からの感状を開いて読み、礼を述べて颯爽と退出した。意に沿わぬ内容だったならば、その場で感状を返上する(突き返す)覚悟だったらしい。いかにも景勝家臣らしい激しい気性の持ち主よと、家康もその無礼を笑いながら許したという。家康さんも結構、度量が大きいのよ、実際サ。「天地人」みたいに、ただの狸ジジィぢゃないよ###o(>_<)o
先日紹介した「おきらく戦国まんが直江兼続と愉快な仲間たち」にもあったが、所詮、直江兼続は、地域限定&上杉家と景勝限定の「愛と義の人」だからね。。。捏造でもせんと、妻夫木くんの見せ場が作れなかったのかもしれないケドね〜。でもさ。だったら、伊達政宗が自慢して皆に見せびらかしてた大判金貨に、兼続は「弓箭を取る手にそんな不浄の物は取れません」っと決して触らなかった話や、大阪城内ですれ違った際に政宗を無視して咎められると、「戦場では(逃げる)後ろ姿しか見てなかたので、気が付きませんでした〜」っなんて、オチャメに嘯いた話なんかのカッコイイ見せ場を、とっとと以前に入れたが良かったんでないのかいな〜???(¬ε¬)歴女なら誰でも知ってるよ〜!
NHKに物申したい戦国ファンがたくさん見ていることで高視聴率をキープしていた(sauce:メンズサイゾー)と噂の「天地人」。歴史好きの人間、特に戦国時代や上杉家に思い入れの深い人間には不満だらけ。だが、ダメ出しをするからにはやっぱり観てから物申さねばという生真面目な歴士&歴女の姿勢が、図らずも「天地人」の高視聴率に貢献してしまったのか、、、と思うと、遣り切れないワ…全くッ!(〃´o`)=3とほほ!
Sea Monkey ^_~*