医療関係のニュースが…

鼈甲玉

立て続けに医療関係のニュースが紙面を賑わしていますね。
鼈甲玉(べっこうぎょく)というお菓子→を頂きました。激務とストレスで精神のバランスを崩してしばらく休養していたダンナの部下が、休養中に行った湯布院温泉で買って来てくれたそうです。復帰してくれて本当に良かった! ただでさえ少ない医局員。その人が休んでる間にダンナに掛った肉体面&精神面での労苦は、普段仕事を家庭に持ち込まないダンナであっても、つい顔や言葉の端に出る凄まじさでした。
産科医不足が改めて浮き彫りにされた妊婦たらい回し死亡事故も、福島県大野病院事件が拍車を掛けたんじゃないかと思って感慨深かったですが、特に自殺した小児科医さんの家族の損害賠償請求のニュースは、私の心に少なからずさざ波を立てました。既に労災認定はされているのに、勤務していた病院に損害賠償請求…。ご家族も同じ医療関係者だということに、もっとショックを受けました。もちろん、亡くなった方はお気の毒だと思います。でも、急性心不全で死亡とかのいわゆる過労死なら理解できますが、死因は自殺です。
ダンナの医大時代の親友の麻酔科医さんも、自分で麻酔剤を点滴注入して自殺しました。激務と自殺の因果関係がはっきりしないとして、彼は労災認定されていません。勤務医のみならず、労災認定すらされていない過労による自殺者なんて、世の中にはまだたくさんいます。小児科医不足を社会に告発するつもりの損賠賠償請求だったんでしょうが、逆に小児科医不足に拍車が掛けてしまたんではないかと、思わずにはいられませんでした。
私は遺族側の控訴を棄却した判決は、すこぶる妥当だったと思います。5人いた小児科医が2人辞めて1人が自殺、残された2人の小児科医さん達は一体その後どうされたんでしょうか? 彼らが負った精神的&肉体的な苦痛の凄まじさは、想像に難くありません。その方達にこそ、損害賠償請求の権利があるのではないかと私は思います。彼らだけでなく、同僚にいきなりドロップアウトされ、生きながら死ぬ思いを味わっている産科医や小児科医が全国に今、一体何人いることか…。私も会社員時代、同じ課の先輩に鬱病で長期に休まれて、引き継ぎもなく仕事を丸投げされ、いっそ病気になった方が楽!っと思うほど追い詰められたことがありました。今、産科医になったら、小児科医になったら、先に辞めたモン、倒れたモン勝ち!みたいな状況にレジデントの内からいきなり投げ込まれるのです。それが判ってて、小児科医や産科医を目指す人がいるでしょうか?
どうも病院側の立場に偏り過ぎて、自殺者の遺族に厳し過ぎるんでは?とお思いでしょうが、実は私のダンナは、昨年末に消化器系の癌の手術を受け、今も抗がん剤治療中の身なのです。入院(勤務してる病院)中も白衣に着替えて病棟を回り、手術のプレメジ(麻酔前眠剤投与)の直前まで、治療方針を聞きに病室に来た部下に指示を出していました。それでも退院二ヶ月足らずで職場復帰し、三ヶ月と経たずに長時間のオペも執刀、骨髄抑制などの抗がん剤の副作用と戦いながら、今は通常のローテーションをこなしています。当初、日本癌治療学会会員のダンナが癌になるなんて〜っと慌てましたが、アフラックで有名になった加藤先生↓

東大のがん治療医が癌になって ああ無情の勤務医生活

東大のがん治療医が癌になって ああ無情の勤務医生活

みたいに、働き盛りの癌治療最先端の医師が癌に倒れることなんて珍しくありません。「振り返れば奴がいる」「白い巨塔」「白い影」、放送中の「風のガーデン」のようなTVドラマの中だけのことぢゃないんです。現にダンナの友達の医者仲間には、ダンナの他に闘病中の方が一人、亡くなった方が二人います。家族として言わせて頂けるなら、私はダンナが癌になったのだって立派な労災だと思っています。でも、因果関係がはっきりしない以上、労災認定されるはずもなく…。癌で亡くなった医師の家族が労災申請したなんて話も聞きません。なんで激務による鬱病で自殺したら労災で、激務による不規則な生活やストレスが原因で癌になったら労災じゃないんでしょうか? 労災認定されていて、その上に損害賠償請求だなんて###<しつこい?
度を越した連続長時間勤務の間中、仮眠はおろか食事も摂れない超不規則な生活…。デリケートな同僚や部下との人間関係。手術直後に病室に飼い犬を連れ込み、犬が持ち込んだ雑菌で感染症を起こすと担当医や病院のせいにするようなモンスター・ペーシェント(実話です!)達から受けるストレス。これぢゃぁ、病気にならない方がおかしいですよね。それでもミスは許されない!では、もう医者になんかなる人はいません。医者も人間です。出来ることなら開業して、勤務医生活から逃げ出したい。でもダンナが「辞めたい、辞めたい」と毎日こぼしながらそうしないのは、そうしたら勤務先の病院や同僚や部下だけでなく、何より担当してる患者さん達に多大な迷惑をかけると解っているからだと思います。
だから、なんでもかんでも患者が損害賠償訴訟を起こす昨今の風潮は、間違っていると思っていました。訴えたいのはこっちの方です。大半の医師やその家族が、それでも我慢して頑張っているのに、同じことを医療関係者仲間がするなんて…。それがなんとも言えない程ショックだったのです。(T^T)*sobs*
怠慢による医療過誤は、もちろん許されません。しかし、医者が人間である限り処置に絶対は無いのもまた事実…。ただそれが、その医師にとって全力を尽くした結果であったどうかを最重視してもらいたいのです。当直中、専門外だったけど善意で患者を受け入れた。全力を尽くしたけれど不幸な結果に終わった。でもその患者さんは、たらい回しにされたあげくに誰にも看取ってもらうことなく亡くなった患者さんの何倍幸せだったか! その医師を責める家族がいるとしたら、私は間違いなく医師の味方をしますね。が、責めるだけでなく即訴訟!な家族が多いのが現実なのです。だから病院側もおいそれと患者を受け入れられません。現在、訴訟を抱えていない地域支援クラスの病院なんて、皆無なんぢゃないかしら? 善意で受け入れても責められる。受け入れなくてもまたしかりなんですけどね…。こうなると、受け入れ病院を探す救急隊員さんも必死です。つい三次救命救急患者なのに、症状を軽く報告してしまう。受け入れてみたら三次患者じゃないの。ウチぢゃぁ診られないよ! あそこの救急隊はウソつくから簡単に受け入れないで!ってな事例も出てくる。これホントの話です、ハイ。全てが悪循環。医療は崩壊するワケですな…。(;^_^A)
親友は自殺する。自分も友達も癌になる。まだ闘病中なのに同僚や部下は、突然辞めたり鬱病になって休む…。そんな話は珍しくもない勤務医の世界…。つらつらと書き連ねましたが、こんなこと読んだら本当に医者になる人なんかいなくなりますね。それでも医師を志すとおっしゃる奇特な青少年の皆様の為にも、安心して医療を提供できる社会を築かなくてはなりません。昨今の現状で、医者の認識はかなり変わって来たと思います。だから、そろそろ患者の私たちも認識を変えないといけないと思うのです。たらい回しが起きるとみんな病院や医者を責めますが、何かあったら即訴訟!という患者側の姿勢が、回り回ってそういう事態を引き起こす原因の一つになっているのは事実です。そろそろ水虫で救急車を呼ぶような不届き者(これも実話!)には、重い実刑判決を下すくらいな法律を作ってもいい頃ではないでしょうか〜!(¬ε¬)
Sea Monkey ^_~*